40年変わらぬ味で愛され続ける、うつくしい島野菜の朝ごはん。
那覇の中心街を一本入った道にそっと佇む「沖縄第一ホテル」は、5部屋だけのちいさなホテル。そんな穴場ともいえる場所に、ほぼ毎日予約でいっぱいになる人気の朝食がある。

品数はなんと50品目。緑・黄・赤の鮮やかな島野菜を使ったお料理と、それとケンカしないように引き立てる琉球ガラスや漆、やちむんなどの色彩豊かな器たちが目を楽しませてくれる。これだけの品数があって、カロリーは585kcalというから驚きだ。

メニューのほとんどが県産の野菜と果物でつくられている。オオタニワタリの煮びたしや、ニガナの白あえ、青パパイヤの炒め、島らっきょうの炒め物など、沖縄では耳馴染みのあるものから、県内でも珍しい島野菜が並ぶ。これだけあると、どれから食べようか迷ってしまうけれど「順番なんて気にせず、沖縄流にちゃんぷるーで食べてください」と女将の渡辺克江さんが笑顔で勧めてくれた。

このうつくしい朝食が生まれたのは約40年前。渡辺さんの母であり、創業者の島袋芳子さんが、島野菜の素晴らしさを伝えたいという想いから提供を始めたという。その時から品数に変動はあったものの、ほぼメニューは変わっていないそうだ。
「野菜ソムリエや国際中医薬膳師の資格をとったけど、勉強すればするほど今の朝食のあり方が理にかなっているということに気づいた。母やおじぃ、おばぁの教えは間違いじゃなかった」と語る渡辺さん。使う野菜にもこだわり、そのほとんどは契約している農家から取り寄せているという。

もちろん、うつくしいのは見た目だけではない。私たちの身体をきれいにしてくれる栄養素がたっぷり詰まった朝食なのだ。渡辺さんが一品一品丁寧に、その効能について説明をしてくれる。

島人参の甘辛炒め
「島人参は、通常の人参よりβカロテンが多く含まれています。お値段は少し高いけれど、身体にはとっても良いんです」

青パパイヤの炒め
「青パパイヤは、免疫力を高めてくれる効果があります。パパイヤイリチーでもお馴染みですね」
そして渡辺さんイチオシなのが、この長命草のサラダ。沖縄では「サクナ」、「チョーミーグサ」ともいわれている。

長命草のサラダ
「すべての栄養素が含まれている万能野菜です。この野菜ひとつでパーフェクト! 沖縄では昔から一株食べると一日長生きするといわれています」と渡辺さん。
苦みのある野菜だけど、細かく刻まれた葉が、上にまぶしてある鰹節と口のなかでよく混ざり、やさしい味わいに。そんな万能野菜「長命草」はジュースとしてもいただける。こちらはスッと喉を通るほのかな苦味がクセになりそうだ。

右からシークヮーサーの実入りジュース、長命草のジュース、豆乳。すべて自家製。
窓の外を見ると、那覇の中心街とは思えないほどの緑あふれる庭園に心癒される。この贅沢な朝の時間を求めて、宿泊客以外の観光客はもちろん、最近は地元の人も多く訪れるという。

朝食を食べるためだけに、沖縄に訪れるリピーターも多いそうだ。「召し上がったお客様は、身体が温まった、浄化された気がする、お腹の調子が良くなった、とみんな笑顔で帰っていくんです」。40 年ものあいだ続けてこられたのは、その笑顔があったからなんだとか。

これからも先もずっと、変わらずあり続けてほしい。そんな風に願わずにはいられない、うつくしい朝食だった。
沖縄第一ホテル
住所/那覇市牧志1-1-12
電話/098-867-3116
営業時間/朝食は8:00、9:00、10:00の時間制
定休日/不定休
写真・文 セソコマサユキ
独自の視点で沖縄の魅力を切り取る編集者
【公式ウェブサイトはこちら】
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